次の時代のことを、考え始めたいのです。今すぐに。
人は物を食べて生きます。
が、実際には食べるだけではありませんよね。
ちょっと下品な話ですが、食べたぶんだけ「うんち」をします。
テレビではグルメ番組が流行っていて、
みんな食べることには注目しますが、
その裏では、かならず「うんち」していますよね。
目を逸らしてはいるものの、
食べたものを出さない人は一人もいないわけで、
物事の全体像を捉えようと思ったら、必ず表と裏の両面と
しっかりと向き合わなければいけません。
例えば、「健康」ということを俯瞰するなら、
食べるだけでなく排泄も重要なはずです。
そんなふうに。
※
話は変わります。
Aさんが、豊かな生活をする上で
1日にビニール袋にひとつのゴミを生み出すとします。
そうすると、Aさんは一年で365袋のゴミを生み出すことになります。
Aさんほど豊かではないBさんは、
4日に1袋のペースでゴミを生み出します。
一年で91袋のゴミを生み出すということです。
が、当然、自分も豊かになりたいと思っています。
そして、Bさんも豊かな生活を手にいれたとき、
Bさんも一年に365袋のゴミを生み出すようになります。
それまでAさんとBさんを合わせて、一年に456袋だったゴミが、
730袋に増えてしまいました。
それだけでなく、あるときまでは、
世の中の大半の人がBさんのような生活のレベルでしたが、
努力の結果、多くの人がAさんのような
豊かな暮らしを手に入れることができるようになりました。
すると、豊かな人が増えるぶんだけ、
世の中は365×人数分のゴミで溢れかえるようになっていきます。
それが世界中で起きていくと、
まるで倍々ゲームのように地球のゴミは急激に増えていくということです。
簡単な算数の問題でした。
※
食事とうんち、そしてゴミ袋の簡単な算数の話をしたのは、
「物理的な豊かな暮らし」というものが食事だとすると、
その裏には大量の消費の結果生み出される大量のゴミと、
大量に消費するエネルギーという問題が
当たり前のこととして存在している、ということを
認識していただきたかったからです。
もちろん、そんなこと、皆さん、頭では知っているはずです。
そして、それが社会問題、環境問題になっていることも、
頭の片隅で知っているはずです。
いつか、誰かが手を打たなければならないのだろう、
ということも知っているはずです。
が、それに着手するのは、今ではない。
それに着手するのは、自分ではない。
そう心のどこかで思っているはずです。
そういう人を責めているのではありません。
我々はみんな現代の経済のサイクルの中で生きていますから、
そこから逸脱することを考えたくないのが普通なのです。
私も含めて、みんながそうなのだ、ということを
まずは共有したいのです。
※
人というのは、課題が「自分ごと化」されたときに、
初めて行動に移すことができるようになります。
言っている人とそうでない人のちがいはただひとつで、
その課題が「自分ごと化」されてしまったか、
あるいはまだ眼中にないか、ただそれだけのちがいなのです。
これは本当に難しい話で、
恋をしていない人にラブソングが響かないように、
他人の出来事だと思っていたことが
自分のことになる、というのは大変なことなのです。
※
自分ごとになるきっかけは、人それぞれでしょう。
福島の原発が爆発したのを見て、急に気がついた、
という方がいらっしゃいました。
身近な人がガンになって、
保険について真剣に考えた、という人もいます。
そうやって、突然、人の心に起こる「自分ごと化」。
そのメカニズムは、おそらく、
何かが自分でも共感できるヒントや糸ぐちとなって、
急に点と点が線でつながって、
「意味がわかるようになった」ということなのだと思うのです。
その課題は今までも目の前に存在はしていたはずなのだけど、
その存在を認識できなかったのはなぜなのか。
文字通り「眼中になかった」のは、なぜなのか。
そこと向き合いたい。
自分が、今のように考えるようになったきっかけは
いったいなんだったか・・・?
人が共感できるようになる、いい例え話はないのか?
とても難しいですが、
「意味がわからなかった」ことの意味が、
何かの出来事をきっかけに、急にわかるようになる、
そういう現象が、実際にあると思うんですね。
で、それが見えてきた人が、必死に訴えている。
まだ見えていない人に。
でも相手には、見えてから、届かない。
そういうことが、この世の中にはたくさんあるのです。
※
そこで起こる問題があります。
それは、見えていない人から見ると、
見えている人の行動やメッセージは、「異常」に見えるということです。
気持ち悪いんですよ。
例えて言えば、新興宗教に没頭している人と
まったく変わらない印象で見えてしまうのです。
例えば「憲法を守れ!」というデモ運動をしている人は、
まだ自分ごと化されていない人からすると、
気味の悪い人の集団に見えるのです。
いま、言葉を選ばずに言っていますが、
それは現実なので、そのことを批判しても仕方ないのです。
ものごとを動かしたいなら、
どうしたら「自分ごと化」できるのか、
ということを、真剣に真剣に考え、実践するしかない。
そう思うのです。
※
私は、というと、すべての発信の根元に、
「地球環境の問題」を置いていると思います。
そして、いま、資本主義という仕組みが老朽化し、
もうその寿命が尽きようとしている中で、
つぎはどんな価値観のどんな時代にすべきなのか、
ということを考えなければならない、と思っているのです。
だから、そのことを共感できるように、
できるだけ平易に、自分ごと化されるように、
発信をしていきたいと考えています。
だから今、食事とうんちの話から、
資本主義の限界の話をしたいと思っているのです。
※
資本主義にもいろいろな側面があるわけですが、
ひとつの特徴として、たくさんの人に
「物理的な豊かさ」を押し広げていく主義だと言えるはずです。
先の算数の話に出てきたBさんを、
Aさんのように変えていく、ということです。
昔は飛行機に乗ったことがあるのは、
ある限られた層の人しかいませんでしたが、
今ではたくさんの人が飛行機を利用するし、外国に行ったりもします。
サービスが一般化され、値段が下がり、
たくさんの人が利用できるようになった、という、
「豊かさを押し広げる例」のひとつです。
けれど、飛行機は大量の化石燃料を燃やすわけですから
例えば旅客産業が消費する燃料の量は
ここ数十年で飛躍的に伸びたと思われます。
そしてたくさんの人がその産業に従事して飯を食べている以上、
たくさんのお客さんが毎年飛行機を利用し、
その数が増え続けなければ、産業そのものを支えられない、
ということになりますよね。
それこそがまさに資本主義です。
つまり、「物理的な豊かさ」は、
イコール、エネルギーを消費し、ゴミを生み出すことであって、
それをどんどん増やしていくという宿命を背負った資本主義は、
環境破壊と表裏一体である、ということなのです。
人が食べてうんちをするように、
資本主義は、豊かさを溢れさせつつ、
地球環境を破壊する、というワンセットなのだ、ということを
もうそろそろ諦めて、
ちゃんと認識すべきなのではないでしょうか。
※
資本主義に代わる、新しい仕組みが必要です。
もちろん、いちど手にいれた豊かさや便利さを
すべて捨てる、という選択肢はないでしょう。
その中で、幸せを実感しながらも、環境を保全し、地球と共生し、
末長く人類が生きながらえていくことができる仕組みです。
では、新しい仕組みとはどんなものなのか?
どんなものであるべきなのか?
私の中に、まだ答えどころか、アイデアさえありません。
それをみんなで力を合わせて考えたいのです。
1日も早く、考え始めたいのです。
だって、王制から資本主義に移行するまで、400年かかってるんです。
資本主義から次に移行することもいつか必ず起こるわけですが、
それにはトライアンドエラーも含めて、ものすごい時間がかかりますよね。
少なくとも数十年。いや、100年くらい?
だから、早く始めないといけないのです。
環境は、日、1日と、壊れ続けているからです。
手遅れになる前に、みんなで考え始めたいです。
みんなで。
人類の課題を解決するのは、人類しかいません。
人類とは、私たちのことだと思うのです。